見守り愛 〜ビタースイートな副社長と一目惚れの恋を成就したい〜*おまけ終了*
(実家だとそのまま殻に被りついて、歯で割って食べちゃってもいいところだけど)


流石にそれを此処でやれば顰蹙(ひんしゅく)ものよね…と思うから、なかなか手が出せない。

それに、どうにも喉に詰まらせてしまいそうで、さっきから口にできているのは、野菜とか豆腐とかのほぐれ易いものばかり。


食べたくても食べ難いから、蟹はわざと見ない。
気になるけど手も出さず、じっと我慢をし続けていた。


「あれ?神野ちゃん、蟹、苦手だった?」


嫌いな物は特にない…って言ってたよね、と先輩が気遣う。
こういう時は知らん顔していて欲しいのに、変な気遣いだけはやめて欲しい。


「どんどん食べていいのよ。遠慮しないで」


会長の奥様が和かに促してくる。


「そうそう。これも何かのご縁だし、此処で遠慮していたら勿体ないぞ」


酒も美味いぞ〜、と会長は私の前に置いてあるお猪口に日本酒を注いでくれようとした。


「あ、私…」


日本酒はアレルギーが…と言いだしかけたところで、さっと目の前に伸びてくる腕。
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