見守り愛 〜ビタースイートな副社長と一目惚れの恋を成就したい〜*おまけ終了*
「なんだよ、えらく優しいじゃないか」


社長の声に我に戻って目を向けた。
社長も勿論そうだが、隣に座っている先輩までがニコッと笑みを浮かべている。


「別に優しくしてる訳じゃない。殻を剥くのが面白いだけだ」


何なら皆の分も剥いてやるぞ、と大きな蟹の半身を掴む副社長。
会長夫婦も先輩のご両親もそれを見て笑い、自分達はいいから私をもてなしてやりなさい、と言っている。


「そう言えば、さっき来た時から思っていたんだが、神野さんは千之とは付き合っているのかな?」


それでこの場に呼ばれているんだろう…と何故か勘違いをされたらしい。
私は慌てて、「いいえ!」と手を横に振ったけれど、副社長はそれについては否定もせず、黙々と蟹の身を殻から外している。


(副社長、何か言って下さいよ!)


変に誤解されたらどうするんですか、と目を向けるが、彼はこっちを振り向きもしない。


「そうか…残念だな。こいつにもそろそろ春がきても良さそうなのにな」


速攻で否定したからだろうか。
会長はお酒を飲みながら納得し、副社長の方へ顔を向けてこう訊いた。


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