見守り愛 〜ビタースイートな副社長と一目惚れの恋を成就したい〜*おまけ終了*
「この際だからお前の理想の女性を訊いておく。千之は一体どういう女性なら自分の彼女にしようと思うんだ?」


親にも彼女とか全然紹介したことないだろう…と過去のことまで持ち出し、彼に聞き出そうとした。

しかし、副社長は知らん顔で黙々と蟹の身を剥いている。
皆の注目の的になっていることは百も承知だろうに、それも無視して蟹の身を外し……。


「千之」


社長の厳し目な声が響き、私は勝手にドキッとした。
目線を流すと若干怒っているような社長の様子が窺え、この場で兄弟喧嘩でも始まるのはないか…と心配した。



「………く人」


囁く声が聞こえ、反射的に振り向く。
隣にいる彼は変わらず蟹の足を握っていて、器用に殻を折っては、スルリと身を引き抜いている。


「我慢強く、前を向く人」


二度目に囁いた声はハッキリと聞こえ、社長も会長も安堵の表情に変わった。


「そうか。前向きそうな女性が好みなんだな」


上昇志向のお前らしいな、と笑う会長。

それを聞いて、私はかなり悄気てしまい、(そうか…前向きな女性か…)と肩を落として溜息を漏らした。


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