君 色。 <短>
“片方ずつね”
特別意味はないけれど、なんとなくそうすれば繋がってる気がして
半分こした、お揃いのピアス。
私は右耳。
君は左耳。
私はいつもケイちゃんの左側で
ケイちゃんはいつも私の右側にいた。
それから手を絡めれば、夏は蝉の鳴き声が、心地いい温もりに変わって
冬は、冷えた体があったかくなった。
二人重ねた手は、そんな魔法の力があった。
「南……」
知らぬ間に俯いていた私は、黙ったままでケイちゃんの方へ首を回す。
ケイちゃんの左耳が空席だってことくらい、嫌でも最初に気付いていた。
勝手に私の目はチェックしたがるし、ケイちゃんの耳は丸見えだから。
謝られるのだけは嫌だ。
惨めになるから。
「……俺も、俺もあるよ」
「え……」
そう言うとケイちゃんは、ジーンズのポケットから出てきた皮の財布の中から
見たことのある、11月の二人の記念日に合わせたブルートパーズの小さな石を、手の平に取り出した。
「あ……」
「これだろ?」
私はこの穴を大事にして、ケイちゃんは、このピアスを大切にしていた。
私達、相変わらず微妙にズレててなんだか笑ってしまった。