君 色。 <短>



あの頃もそうだった。


なんでも解り合えるはずなんだけど、些細なところですれ違う。



私達は、同じ歩幅じゃないし

同じ口癖じゃない。


それと同じこと。

全く一緒の思考回路じゃないのは当たり前だ。



だけど……

だけど私は君に染まりたかった。


無理してとか、そうなろうと特別意識したわけではなくて

気付けば自然にそうなっていた。




――オレンジ色がスキ

その日から、私はオレンジの花がスキになった。


――長い髪がスキ

肩に届かなかった私の髪は、いつのまにか風になびいていた。


――絶対泣かないよね

この日から私は、ケイちゃんの前だけの泣き虫になった。



こんな風に、私は……

加速し続ける気持ちにブレーキのかけ方もわからず、ただ君の隣で笑っていた。



それが、君をスキだったっていう何よりの証拠。

それが、恋をするってこと。



特等席は、助手席でも、かぼちゃの馬車でもなくて

君の自転車の後ろで、ただしがみ付いてるような、大人でも子どもでもなかった、ちっぽけな私。



だけど、

今でも変わらず、そう思える。



――自信を持って。




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