君 色。 <短>



いつもいつも……


近すぎるくらい傍にいて

視線は変わらず、すぐそこで――


だから周りが見えなくなって

だからいっぱいいっぱい失って――



君と居たから

君と居たせいで


私は失くしたモノの方が多かったんじゃないかって、冷静になれた今になると思う。



消えかけていく君と過ごした日々以外に、私が得たモノなど何があったのか?

そう聞かれても、うまい答えが浮かばない。




なのに後悔してない。

……後悔できない。



どうしても君を憎めない。


何も言わずに置いてけぼりにしたケイちゃんを、私は嫌いになれなかった。




――南


君の、その少しかすれた声で囁かれる私の名前は

どんな子守歌よりも、深い眠りに堕ちてしまいそうなほどの安らぎをくれた。



多分……私は――


出逢ったことに

君色の自分に


まだ停まったままなの――



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