君 色。 <短>
二人の間に流れる沈黙が嫌だ。
たとえほんの一瞬でも。
「ケイちゃんケイちゃん!」
はしゃいでみる。
昔の私はこんなんだったかな?
話題を探さなきゃいけなくなってしまった関係が、悲しい。
「ケイちゃん、私のマンガ借りっ放しでしょ」
「え?そうだっけ?」
「そうだよぉ。しかも最終巻!」
話題が見つからなくて、突拍子もなく、昔貸したマンガの話なんか出してしまった。
数年ぶりの再会。
そんなしょうもない話をしている場合じゃない。
もっと話さなきゃいけないこと。
話したいこと、たくさんあるはずなのに……
いざって時に出てこない。
プレッシャーとか本番に弱いのは、私の悪いとこだ。
「相変わらず、南は変わらないな」
「何が?」
あ、君が笑ってる。
「ううん。なんでもない」
きっと私との想い出だ。
変わってないって言葉が何より嬉しかった。
「そいえば、マンガも結末確認してから読むとこ、まだ変わってないの?」
「まぁね!だって、安心したいんだもん」
先が見えてないと進めない。
臆病者なんだよ、私は。
「楽しみなくなるっていつも言ってるのに」
バカにしたように目を細めて笑う。
あぁ、私はケイちゃんのこの優しい笑みも好きだったなぁ……