くちびるが忘れない
ホテルに忘れたはずのコートが届いてる


アノ人の仕業


あの日私がラウンジにいた事も


このコートが私の持ち物だって知ってるのも


矢野将太郎だけ


ますますムカつく


余計な事するな!


絶対お礼なんて言わないから


週明けいつもバタバタするのに


さらに課長に仕事を回されました


残業です


チッ


ー 奈生ごめん。新しい子入って教育係になったからしばらくランチ行けない ー


お疲れ~美穂


じゃあ明日からしばらくお弁当持参にしよ


1人ランチは寂しいし外寒いし


20時7分


駅前のスーパー21時までだから今日は帰るか


まだ残ってる同僚に挨拶する


渋々課長にも…


『失礼します』

「お疲れ」


冷たい目で睨まれる前に頭を下げ逃げてきた


そうそう


紙袋…コートを忘れず持って帰らなきゃ


夕食とお弁当の献立を考えながらEVを待ってた


ハンバーグにしようかな


それともチキンカツにしちゃうか


カツカツ


「結城さん」

『えっ?』


よっぽどぼぉ~としてたのか真横に立たれるまで気づかなかった


「落ちてた」


差し出されたシュシュ


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