君は同期で幼馴染で××で
「真紀ちゃん、今日の夕飯は何にする?」

「うーん……簡単に作れるもので……中華丼かな」

頭の中で、冷蔵庫に残る半端な葉物野菜を思い浮かべる。料理は別に好きでも嫌いでもない。必要に迫られてやっている感じだ。だから、ものすごく凝ったものは、滅多に作らない。時短、節約、使い切りな料理ばかりだ。

「やった!!じゃあ僕は、春巻きを焼くよ!」

「おうい、陸さん。何食べる気満々なのよ?」

「いいじゃん。一人分も二人分も、大して変わらないでしょ?一緒に食べよ」

なんだろう……この仕事中とのギャップは。決してチャラいとか軽い感じはしないんだけど、私と接している時は、すっかり気を許しているのか昔のままだ。

「一人分も二人分もって、それを言うのは作る側の人だよ」

呆れた表情を隠そうともしないで陸を見やる。でもまあ、だいたいこの時点で許可してるんだけど。

「真紀ちゃん、帰る前にスーパーに寄ろうよ。春巻きと……お酒はどうする?」

「仕方ないなあ。でも、お酒はやめておく。まだ週の半ばだし」

結局、なんだかんだ言いながらも、一緒の電車に乗る私達。
マンションの最寄駅までは、乗り換えなしで5駅行ったところにある。5駅とはいえ、都内の電車のラッシュ時は殺人的な混み具合だ。背の低い私にとっては、つり革につかまることもままならず、常にただひたすら足に力を込めるのみ。
だけど、陸がいるとずいぶん助かる。ドアのところに立てば、陸が壁になって私のスペースを確保してくれるし、そうでなくても腕につかまらせてくれる。

いわゆるワンコ系イケメンな陸と、こんなシチュエーションになれば、きゅんきゅんしてもおかしくないだろうけど……なんせ付き合いは23年。このシチュエーションに、恥じらいもなければ胸が高なることもない。ついでに言えば、遠慮もない。

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