極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
開きかけそうな恋の花。
茉子ちゃんと大和さんがいい雰囲気で、二人を置いて来た私はなんとなくそんな情景を思い浮かべて一人ほくそ笑んだ。
和小物屋のお嬢様と呉服屋の若旦那。二人はとてもお似合いだと思う。
羨ましいな…とふと思って、いやいやと頭を振った。
ほのかに想ってる人は手の届かない孤高の人で自分の恋心は報われないと知っている。
幸せそうな人達を見て羨んでも仕方がないのだ。
それよりも…と、次に向かったのは高級和菓子屋のあづま堂。
ここの若旦那、平坂斗真さんは流星さんと幼馴染で親友。
彼も見目麗しい男性で、和菓子を作る時のきりっとした表情がとても男らしくて素敵な方だ。
あづま堂では窓越しに作業風景が見えるので斗真さん目当てに来るお客様が多くいる。
今日も人だかりが出来てる窓の向こうでは真剣な眼差しで和菓子を形造っている斗真さんがいた。
少しは覗けないかと人だかりをちょこちょこ首を伸ばしていると斗真さんと目が合った。
にっこり笑った斗真さんが小さく手を振る。それを見ていたお客さんたちがざわざわしだして一斉に後ろを振り向いた。そこにいたのは当然私で恥ずかしかった。
斗真さんも大和さんも私はただの家政婦なのに気安く声を掛けてくれてまるで友人のように接してくれる。二人ともとてつもなく上級階級の御曹司様なのに気に掛けてくれるなんて有難いことだ。それもこれもご主人様の流星さんのお蔭であるのは確か。
その流星さんの為に心を尽くそうと改めて思う。