ハッピーエンド
「エリー、今日も素敵だったよ。君にはバッグを贈ったよ。ヴィーナスのバッグ。女性に人気なんだ」

高いスーツをおしゃれに着こなしたアルベールが微笑む。エリーも「ありがとうございます」と曖昧に笑い、アルベールの話を聞くことにした。

「食事をしながら話でもしよう。君が好きそうな店を見つけたんだ」

エリーの肩にアルベールが触れる。エリーは手を振り払いたいのを堪え、微笑みを作り続けた。

本当は行きたくなどない。しかし、アルベールは貴族の一番上の爵位である公爵という立場だ。アルベールの機嫌を損ねればどうなるかわからない。

エリーは車に乗せられ、アルベールに付き合わされることになった。



エリーが連れて来られたのは、いかにも貴族の店というような高級なレストランだった。展望台からは夜景を見ることができ、店内にいる客も全て立派なスーツや豪華なドレスに身を包んでいる。

「シェフのオススメコースで」

席に案内されるなり、アルベールはすぐに注文する。エリーも「同じものを」と言った。メニューはまだ見ていないが、こんな店に入ったことはない。通い慣れた人の舌を信じることにしたのだ。
< 10 / 17 >

この作品をシェア

pagetop