ハッピーエンド
「申し訳ありません。私は、オビを愛しています。お気持ちは嬉しいのですが、それに応えることはできません」

「そうか……」

しばらく沈黙が流れる。エリーは食事をすることなく宝石のような夜景を見つめ、アルベールはワインを飲み続けていた。

「なら……」

アルベールの冷たさを含んだ声に、エリーは前を向く。アルベールの目には鋭さがあった。エリーは体を一瞬震わせる。

「君が舞台に立てないようにしようか?僕の力を使えば、そんなこと容易いよ」

突然言われたことに、エリーは何を言っていいのかわからない。歌姫というこの仕事を失えば、エリーの居場所はどこにもない。

「君が僕のものになるなら、もっとたくさんの舞台に出させてあげる。元恋人のことなんて忘れさせてあげるよ。……まあ、その恋人が生きているというなら話は別だけどね」

アルベールは返事は次の舞台の時でいいと言い、料理を楽しみ始める。しかし、エリーはあってないような選択肢に食事を楽しむことができなかった。
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