君がいれば、楽園
「でも……植物は人間とはちがうから……」

「大事にしたいと思っていなかったら、気にもかけない。それは、植物でも人間でも一緒だと思う。俺、夏加に観察されるのは、ぜんぜん嫌じゃないよ」

 彼が植物たちに話しかける時、いつもこっそり見ていたのを気づかれていたと知って、わたしは顔を赤らめた。

「すぐに理解しようなんて、焦らなくていいんだ。植えたばかりの苗木が立派な大木になるには、何年もかかる。花も同じ。美しく咲くには栄養や水だけでなく、時間が必要なんだ。俺は、夏加との関係をきちんとケアしながら、時間をかけて育てていきたい」

 彼の手は、扱いにくい植物も豊かに育てることができる。
 そんな器用な手なら、扱いにくいわたしとの関係も育てられるかもしれない。
 わたしにも、どうすれば二人の関係を上手に育てていけるのか、教えてくれるかもしれない。

 あの日、アイビーの育て方を教えてくれたように。

 そう思ったから、わたしは彼と「恋人」になった。
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