【女の事件】黒煙のレクイエム
第38話
2020年6月13日のことであった。

場所は、道後温泉街にあるホテル椿館のエントランスのカフェテリアにて…

アタシは、つばきちゃんと一緒に道後ラムネをのみながらお話をしていた。

アタシは、たかよしから受けたDVが原因ひどく傷ついた上に、たかよしの親きょうだいのことを許すことはできんと怒っていた。

着替えとメイク道具をぎっしりと詰めたボストンバックとさいふとスマホと貴重品を入っている赤茶色のバッグを持って家出をしたアタシは、再び松山へ逃げた後、つばきちゃんが暮らしているアパートへ転がり込んでいた。

アタシは、再婚をしてもダンナからきつい暴力とレイプの被害を受けたり、ダンナの親きょうだいと深刻な対立を生んでしまうことばかりを繰り返ていたので、結婚に対するイメージがいっそう悪化していた。

どうしようかな…

再婚をしても、またダンナやダンナの親きょうだいと深刻な対立を生むかもしれない…

アタシは、つばきちゃんにたかよしの家のことを全部話した。

アタシの乳房(むね)のうちを聞いていたつばきちゃんは、アタシにこう言うていた。

「サイアクね…ホンマにサイアクな結末だったわね…今回は、2度目のダンナのきょうだいであったこととダンナの両親がクソたわけたことを言うてウソをついていた…ダンナがボロけりゃ、ダンナのきょうだいもボロで、オカンもボロ…もっともボロいのはオトンよね…ダンナのオトンがのみ・うつ・かうを繰り返す性格でホンマにドアホやわ…あきよしが殺されて、上のきょうだいふたりがケーサツに逮捕された…今のダンナもしょっちゅうケーサツ沙汰を起こしてはるみたいだから、虫ケラ以下のサイテー野郎ね…一番下のきょうだいもケーサツに逮捕されとなれば、もうアカンね…こずえちゃんはこれからこの先どうやって生きて行くのかしら?」
「どうやって生きて行くのよって…アタシはやさぐれ女だから、水商売に出戻るしかないのよ。」
「そうね…こずえちゃんは結婚なんかせえへん方がええみたい…と言うよりも、人が決めた男と一緒に居つづけるなんて、息がつまってしまうわよ。」

つばきちゃんは、ラムネをひとくちのんでからアタシにこう言うた。

「アタシもね…こずえちゃんと同じように生まれた時から放浪生活をしていたのよ…アタシの家はサーカス小屋だったのよ…各地を転々として暮らしていだけど…小学校と中学校は、オカンの実家がある新宮村(愛媛県四国中央市)の親せきの家からバスで川之江の中心地の学校へ通っていたの…川之江の中学を卒業したけど…サーカス小屋の家におるのがイヤやし、新宮村の親せきの家から高校に通うのもイヤやから、高校なんかゆかなんだ(行かなかった)…せやけん、京都へ行って舞妓はんになることを選んだの…19の時に、大阪ミナミのホストクラブのナンバーワンホストのことが好きになって…同棲生活をしてはっただけど…カレにだまされて借金を背負ってしもたんよ…カレの借金を返すために岐阜の風俗店で働いていたわ…それからは、西日本の各地を転々とする暮らしが続いているのよ…アタシね、一定の金額がたまったらね…札幌へ行くことに決めたけん。」
「札幌。」
「すすきのに、新しいナイトクラブができるので、そこへくらがえをすることにしたけん。」

つばきちゃんの話を聞いたアタシは、バイトをしておカネを稼いで、一定の金額がたまったら新しい街へ行くことを決意した。

アタシは、つばきちゃんからの紹介で朝は喜与町(きよまち)にあるNTT病院のリネンのお仕事、昼は銀天街のアーケード通りにあるポポロ(パチンコ屋さん)、夜はいよてつ松山市駅前にあるファミマと三つかけもちをしてバイトをすることにした。

それでも足りない分は、松山市内のデリヘル店や道後のファッションヘルスやソープなどの風俗店で働いて、おカネを稼ぐことにした。

住まいは、路面電車の上一万駅前にあるロフト式のマンションで暮らすことにした。

アタシは、女ひとりで生きて行くことを決意したので、たかよしの家に対する怒りがさらに増幅をしていた。
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