海の景色が変わる頃には…
昨日の夜、
凌からいつものように電話がかかってきたけど出る気にならずそのままにしていた。

LIMEは無く、着信が1回だけ。

昼休みは雨が降っていたから由香と教室でお弁当を食べる事にした。

凌は先生に呼ばれて教室を出て行った。

「で…何があったの?」

由香が心配そうな顔で私の顔を覗きこんだ。
ずっと普通に振舞ってたはずなのに由香には見破られた。全てを話し終えると由香は一言「そっか…」と呟いた。

「あ!でも…私の見間違いかもしれないし!女の子の頭撫でたくらい…!ねぇ?」

空気を変えるように明るく振舞ったけど由香はまっすぐ私を見て「無理して明るくなんてしなくていいんだよ?」と言ってくれた。

それを聞いた瞬間涙が溢れて止まらなかった。もしかしたら凌はあの子の事が好きなのかも知れない。
昨日まであんなに楽しかったのにその関係がもうすぐ終わってしまうかもしれない。

何より私に優しく触れるのと同じように他の女の子に触れる凌なんて見たくなかった…
凌がそんな事するなんて信じられなかった。

凌とちゃんと話をしようと思ったけど何も言えないまま放課後になり凌はいつものように生徒会の集まりに行ってしまった。

「話があるから教室で待ってるね」

凌には一言だけLIMEを送った。

ガラガラガラ…

「あれ?玉置は?帰った?」

教室のドアから3年生が顔を出した。
確か…生徒会長。

「えっと…生徒会に行きましたけど…」

「え?今日生徒会無いけど…
まぁいいや。ありがとう!」

そう言って会長は教室を後にした。

私はすぐに靴箱に向かった。毎日放課後に生徒会の集まりがあると凌から聞いていた。
凌の言う事が本当なら凌の靴がまだあるはずだ。



靴箱に着くとすぐに名前を探した。


玉置凌…


玉置凌…


玉置……凌……




「玉置凌」のラベルの靴箱の中に凌の靴はもう無かった。

―何で…?

色んな考えが頭をよぎったけどそのまま凌の家へ向かった。急げば急ぐほど冷たい雨がパシャパシャと足に跳ね返る。凌の家の近くで凌を見つけて私は咄嗟に脇道に隠れた。



凌…



私が見たのは、昨日の女の子と手を繋いで楽しそうに話している凌の姿だった。

凌達はそのまま家に入っていった。
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