【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい

「でもあいつのことだから、きっと君にも冷たいんだろ。なんていうかさ、自分の心の前にどーんっと壁作って」
「え?」

 まるで今のわたしと先生の関係を見透かしているみたいなその言葉に、思わず肩に力がこもった。それを、柳さんは肯定と受け取ったらしい。

「やっぱりね。これは俺のエゴなんだけど……許してやってくれないかな。あいつもあいつで大変なんだ」
「大変って……。どうして?」

 柳さんの言葉の端に重い空気を感じ取り、思わず前のめりになる。
 けれど柳さんは、眉毛を下げて人の良い笑顔を浮かべ、身を引くように椅子の背もたれに背を預ける。

「いや、やめておくよ。森下ちゃんに聞かせたら、君は要らないことまで背負ってしまうかもしれない」

 けれどここで引き下がれなかった。柳さんから聞き出そうとしている自分はずるい。でもやり直せるなら、手段を選んではいられなかった。どうしても、綾木くんの心を知りたかったのだ。
< 22 / 160 >

この作品をシェア

pagetop