【完】終わりのない明日を君の隣で見ていたい
すると不意に視界が暗くなった。顔をあげれば、柳さんがわたしの頭の上にキャップを乗せ、優しく微笑んでいた。
「大丈夫。頼りな、君の先生のこと。ほら、これ被ればまわりから見えないから」
柳さんに背中を押され、先生の厚意を断ることもできなくて、おずおず先生の背中に乗る。その途端、重力がなくなったみたいにふわりと自分の体が宙に浮いた。
わたしをおぶった先生が、柳さんの方へ向き直る。
「柳、うちのがお世話になった」
「いや、楽しかったよ。また遊びに来てね、森下ちゃん」
「ありがとうございました」
先生の背中でお礼の言葉を口にすると、柳さんは笑った。まるでつきものが晴れたような、安堵したみたいな笑顔で。