猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
志信さんと信士くんが金剛家にやってきて一週間が経った。
私と信士くんは仲良くなり、一緒に植松さんのところで仕事を手伝ったり、離れのダイニングを宿題に貸すようになった。

最初は不安だった様子の信士くんも、私が味方になったと思ったのか、幾ちゃん幾ちゃんと弟みたいになついてきて可愛い。

信士くんについては三実さんに話してある。本当は志信さんといたいだけで、居場所のない現状に心許なさを持っている。

『私になにかできることがあれば、と思うんです』

私の相談に、三実さんは思いのほか冷たい声音で答える。

『幾子が頑張るところではないよ。彼の生活の安定のためを思うのは志信の仕事だ。彼女が両親に頭を下げ息子ともども千葉の実家に戻るか、彼女の収入でやっていける学校に信士を転入させるかだ』

その通りだとは思う。だけど、私の言葉なら丁寧に聞いてくれる三実さんにしては突き放した言い方なのが気になった。

『それとも、志信の言う通り、俺があの子の父親になるのが望ましいか?』
『それは……違うと思いますけれど』

三実さんはそれ以上この件について語らなかった。
それなら私にできることは、この家にいる限り信士くんの味方になってあげるだけだ。

一方で、かすかな苛立ちは毎日募り続けた。
志信さんは都内のデパートのアパレルショップで契約社員をしているそうだ。なんでも、神戸に長く住んでいて、信士くんの進学に合わせて東京の店舗に再契約してもらったとか。子どもがいるから契約社員だし、夜の勤務ができないと言っていたけれど、『この家ならお手伝いさんが多いし、私も夜のシフトで出られそうね』と嬉しそうに言っていた。
本当に居座るつもりなのだとちょっとぞっとする。

私と信士くんが姉弟のように過ごしていることも、文句を言わないのはそうした理由もあるようだ。
ひとまず六歳の小学生の面倒を見てくれるならいいとシッター感覚で見ているみたい。
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