猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
気を遣ったのは三実さんで、夕食は必ず自宅に戻ってくるようになった。
母子を離れで食事させなさいという義父の言いつけはまだ有効で、三実さんは私に息苦しい想いをさせまいと夕食の時間だけ帰宅する。その後会社に戻ることも多いけれど。

そうなると毎日のように志信さんと三実さんのやりとりを目にすることになる。
目の前で繰り広げられるのは言い合いばかり。

『三実が私と信士の存在を公に認めれば出て行ってあげてもいい』
『事実じゃないことをどうして認めるんだ』
『あんたの言い方、本当に苛々するわ』
『それは俺もだ』

険悪でヒステリックなやりとりに、幼い頃見た自分の両親の喧嘩を想起して嫌な気分になる。いや、本音を言えばそれだけじゃない。

志信さんと険悪に言い合いをしている三実さんを見てもやもやするのだ。
以前志信さんが言っていた。

『あんたの中でなんだかんだ言って私って特別な女なのよ』
『あんたが一緒にいてラクなのは私』

その言葉が棘のように胸のすみっこに刺さっている。三実さんにとって幼馴染であることには変わりはなく、一度は結婚してもいいと思った相手だ。
駆け落ちされて落ち込む程度には好意はあったのだ。そして、今、目の前に現れた彼女に冷淡に接しながらも完全に突き離せない三実さんがいる。

それとも、私が『あんな女、子どももろとも追い出して!』と怒り狂えば、三実さんはそうするだろうか。
信士くんのことを考えたらそんなことは絶対にしないけれど。
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