猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「あ、あの、三実さんはお忙しいですが、かなり私のために時間を割いてくださっていると思います。ですから、寂しいなんてことは……」
「まあ、三実をフォローだなんて、できたお嫁さんだわ。若いのに」

志信さんがおかしそうに笑い、お義父さんもにこにこと笑っている。
な、なんか……心なしか圧力を感じるんだけど。言動や行動がマウンティングな気がするんだけど……。気のせいかな。

すると、母屋の玄関が開く音が聞こえた。ここは比較的玄関に近い洋間だ。

「お、三実が到着したようだぞ。志信さんが来ていると呼んでおいたんだ」
お義父さんが言い、言葉のとおりすぐに三実さんが顔を出した。おそらく仕事を抜けてきたのだろう。
「三実!」

志信さんが立ち上がる。信士くんも立ち上がらせ、彼の背を押しながら三実さんの前に進み出た。

「久しぶり。ずっと会いたいと思っていたわ」
「……志信、今更なんの用だ?」

三実さんは無表情だ。作り笑いも冷淡な表情も浮かべていない。

「冷たい言い方するのね」
「当然の質問だろう」
「あなたにこの子を合わせていなかったと思ってね。信士よ」

ずいと息子を三実さんの前に突き出す志信さん。私は傍でそれを見守りながら、心臓がばくんばくんとすごい音を立てていることを感じる。

隠し子、というワードが浮かぶ。

「駆け落ち先で子どもを産んだと人づてに聞いたが」
「よく顔を見てあげて。三実の子なんだから」

決定的なワードに私は凍り付いた。志信さんは言った。三実さんの子だと。

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