猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「志信と俺は親同士が仲良く幼馴染みたいなものだ。俺たちが大学生の時に婚約が勝手に決まり、俺は起業やらなにやらで忙しく、正直結婚相手に希望も理想もなかったから了承した。知らない女より面倒がないと思った程度だった」

今の私に対する溺愛ぶりからは想像もつかない。そうか、三実さんは金剛傘下とはいえ、今の会社を自分で設立したのだ。当時はさぞ忙しかっただろう。

「志信は俺との結婚も、俺があいつに無関心なのも気に食わなかったみたいだな。話してみてわかるだろう。とにかく気が強い。昔から喧嘩ばかりだったが、婚約してから関係は悪化した。仲良く対話した覚えは数えるほどしかない」

三実さんが珍しく自嘲的にため息をついた。

「ほったらかしていた俺が一番悪い。あいつは気付いたら、他所に男を作って駆け落ち。あの少年はその男との子だろう。……でもさすがに俺も申し訳ない気持ちになった。志信の両親は平謝りで娘は勘当だと息巻くし、父は俺に対して大事なお嬢さんを傷つけたと怒り心頭だったよ。俺の会社への出資も差し止めたんだ。なにより、当時癌の闘病が始まっていた母が悲しんでね。母の寿命を縮めてしまったのは俺かもしれない」
「そんな……」
「俺は少々マザコンのきらいがあってな。母を悲しませたことが一番申し訳なかった。孫の顔を見せてやる予定だったのに。あとはまあ少々男としても傷ついた。婚約者に逃げられるなんて格好悪いだろう」

そう言って苦笑いする三実さんは、普段より弱々しく見えた。

「こっちにおいで」

三実さんはソファに移動する。私が近づくと、そのまま抱き寄せられた。待って、小さい子どもみたいに三実さんの膝に載せられてるんですけど。
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