猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
私は唇をひくひくさせながら、なるべく優しい声音で言う。

「そういうのストーカーっていうんですよ……知ってますか?」
「大事な未来の妻を案じてのことだ。許せ」
「えええ、許せって……許しがたい……」
「そこをなんとか頼む」

やっぱりこの人の愛情はずれてるし、おかしい。
婚約期間中に感じた不穏な気配は絶対こうした部分も含まれていたのだと痛感する。

だけど、今更そんな三実さんを嫌だとも思わないから不思議だ。この人ならやりかねないとすんなり受け入れてしまう自分がいる。

「遠くから幾子の成長を見守るのは、俺の楽しみだった。あの愛らしい少女が女性になっていく姿は、感動的だったぞ」
「それなら直接会いにきてくれたらよかったのに……」

思わずぼそりと呟く。たとえば高校生の私の前にこんな美丈夫が現れたら……。いつか会ったことがある、きみに会いたかったなんてささやかれたら……。きっと、夢見る少女な私はころっと恋をしてしまったに違いない。

「幼い幾子はきっと俺を覚えていないと思ったからな。何より、愛しいおまえと再会したらそのままさらってしまう可能性があった。犯罪はいけない」

怖いことを平然と言う三実さん。そういうところですよ、そういうところ。

「婚約期間の二年もプレゼントを贈るだけで精一杯だった。二年もお預けなんだ。それなら会わない方がいいと思った。ちなみにおまえからのお礼状はすべて取ってあるぞ。見るか?」
「見ませんよ」

極端から極端。変人を超えた危ないレベルの愛情を持ってるし、私もいつ食べられてしまうかわからない猛獣な旦那様。
だけど、彼のことが全然嫌じゃない。今私を膝の上に載せ、タブレットで私の写真を解説している彼を可愛らしいとまで思える。
私はそっと手を伸ばし彼の髪に触れた。

「幾子?」
< 94 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop