猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「三実さんの気持ち、志信さんに伝えた方がいいと思います。当時の気持ちの行き違いがほどければ、志信さんも冷静になれるんじゃないでしょうか」
「素直な女とは言い難い。なかなか難しい相談だが……」

三実さんが言葉を切って、私の頬に口づけた。

「可愛い妻の進言だ。善処しよう」

照れて赤い顔をしている私の目の前には三実さんの唇。三実さんは変な人なところばかり目につくけれど、本当に本当に綺麗な顔立ちをしている。男らしくはっきりとした目鼻立ちで、彫刻みたい。じっと見つめていたら唇が重なっていた。

「ん」
「事後承諾ですまない」

唇をわずかに離して三実さんが微笑んだ。それは艶やかで色っぽい微笑。

「キスさせてくれ」

はい、の答えを飲み込まれるように口づけられた。
やわやわと合わせた唇がやがて深く重なる。わずかに開いた唇の隙間から熱い舌が滑り込んできた。
拒否するつもりはない。でも応じられる技量もない。私は生物みたいに口腔をうごめく三実さんの舌に翻弄され、私の頬を包む彼の手にしがみついていた。

深いキスをしたのは初めて。キスってこんなに気持ちの良いものだったんだ。お互いの境目がなくなってしまいそう。
吐息とともに唇を離すと、三実さんがいつもの明るい笑顔で言った。

「ここまでにしよう」

あ、やめてしまうんだ。……そう考えた自分に驚いて、私はひとり真っ赤になった。

「そんなに可愛い顔をされると困るが、俺は我慢できる男だからな。今日はここで潔く引こう」

清々しく武士のように宣言し、三実さんは私を膝から下ろした。
うーん、やっぱり変な人。私は猛烈に照れた顔を隠すため、とっくに仕度のできているお風呂の様子をわざと見に行くのだった。

< 95 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop