猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「信士のことこんなところで話せないでしょう?こっちは気を遣ってるのよ」
「話しても構わない。俺の子ではないからな」
「あんたの胤よ!」
「あり得ない主張なのはおまえ本人が一番わかっているはずだ。どこまで自己中心的なんだ」
「自己中は三実よ!仮にもかつての恋人と自分の息子を露頭に迷わせる気?」

志信さんがくるっとこちらを向く。鬼のような形相に慄くものの、あげそうになった悲鳴は飲み込む。

「幾子さんからも言って!この鬼畜に!」
「カッコウの真似事を人間がしようという方が外道じゃないのか?」

三実さんはどこまでも冷淡だ。他人に対しての外向きの笑顔すら見せない。無表情から淡々と繰り出される否定は怖いくらい。そこに感情論百パーセントで志信さんが怒鳴り散らすのだから、話し合いになっていない。

「志信、どうせおまえのことだ。見栄を張って息子を名門私立に入れたんだな。アテにしていた実家からの援助を断られ、行き場がなく転がり込んできたんだろう」
「そんなんじゃないわよ。あの子の頭なら今のレベルの小学校に入れなきゃ駄目なの!」

三実さんが嘆息し、言葉の調子を緩めて言った。

「おまえとは古い仲だ。婚約当時は至らない男だったことは謝罪したい。微力だが、おまえと息子の新生活に友人として援助することも吝かではない。だから、金剛家からは一刻も早く退去しろ」

語尾が強かったせいもあるだろう。志信さんがキッと眉を張った。
交渉決裂の予感……!
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