猛獣御曹司にお嫁入り~私、今にも食べられてしまいそうです~
「あんたって本当に最低最悪の男。でも、私だけなのよね。そういう冷たい態度も苛立った態度も、私にしか見せない。昔からそう。あんたの中でなんだかんだ言って私って特別な女なのよ」

噛み潰すように憎々しげに言う言葉に、横で聞いていた私の方がダメージを受ける。三実さんは私に優しい。どこまでも優しい。傷つけそうになると大きく距離を取る。
感情をぶつけて喧嘩なんてしたことがない。

「あんたが一緒にいてラクなのは私。こんな若いお嬢さんとじゃロリコン同然じゃない。おままごと夫婦がしたかったの?私に捨てられたショックで?馬鹿みたいよ!寄りを戻してあげるから、さっさと別れなさい。そうすれば、うちの両親もあんたのお父さんも……」
「黙れ」

そのあまりに低い声に、私は総毛だった。
見れば、三実さんがじっと志信さんを見つめていた。それは野生の猛獣のそれだった。捕食のため捉えるのではない。闘争のため、相手の息の根を止めようとする獣だ。

「妻を侮辱するな。俺には大事な大事な恋女房だ。他はいいが、幾子について何か言うなら許さん」

負けじと怒鳴ろうとする志信さんの腕を咄嗟に掴んだ。駄目。これ以上この人を刺激してはいけない。

「志信さん、行きましょう。ね。お昼休憩終わっちゃうじゃないですか?」
「そんなのあなたに関係ない!」
「いいから!お願いします!」

引きずるように社長室から出て、エレベーターまで乗せた。
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