極上パイロットが愛妻にご所望です
***

「散らかっていますからね。それに狭いの」

 今朝出た部屋の中を思い出しながら、玄関の鍵を開ける。眠れなくて、部屋の掃除をしていたから大丈夫なはず。

「どうぞ。入ってください」

 玄関を開けて桜宮さんに上がってもらい、私は後に続く。

 高身長の彼が部屋の中にいると、八畳のワンルームがめちゃくちゃ狭く感じる。

 桜宮さんは中央に立ったままで、戸惑っているみたいだ。

「好きなところに座ってください。コーヒーを淹れます」

 バッグを部屋の隅に置き、シャツワンピースの袖のボタンを外してまくる。

 桜宮さんはベッドを背にして腰を下ろした。前にローテーブルがある。

 私は電気ケトルに水を入れてスイッチを押す。テキパキと個々のカップにドリップタイプのコーヒーをセットし、クッキーを用意する。

「温泉まんじゅう?」

 ローテーブルの上のおまんじゅうの箱に、桜宮さんの不思議そうな声がした。

「あ、はい。久美の新婚旅行のお土産なんです」

「そういえば城田さん、温泉へ行くって言ってたっけ」

「甘いものは好きですか? よかったらおまんじゅう、開けて食べてくださいね。コーヒー淹れていますが、先にお茶をいれますね」


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