極上パイロットが愛妻にご所望です
「ありがとう」

 私が差し出したおまんじゅうを取ろうと、桜宮さんは手を伸ばした。

 手のひらのおまんじゅうを取るものと思っていたけど、彼はそれごと私の手を軽く掴んだ。

「砂羽の今の気持ち、いたたまれないって感じだろ?」

「は、はい……」

 私は繋がれた桜宮さんの手が気になって仕方ない。

「ちょっと落ち着こうか?」

 次の瞬間、引き寄せられ唇が塞がれていた。

「んんっ……」

 彼の食むようなキスに、ギュッと胸が締めつけられる。ほんの数秒だけで桜宮さんは離れる。

 そして、妖艶にも見える笑みを浮かべた。

「落ち着いた?」

「お、落ち着けるわけないですっ」

 緊張とは違ったドキドキで、心臓が痛いくらいバクバクしている。桜宮さんのキスはこれで二回目。ふい打ちの口づけは何度されてもきっと慣れない。

 まだ掴まれていた手のひらからちょっと潰れたおまんじゅうが取られる。彼は薄いセロハンをはがして、パクッと丸ごと口に入れた。

「うまい。まんじゅうなんて何年ぶりかだな。もうキス一度する? きっと甘いと思うよ」

「し、しないです」

 ぷるぷると頭を左右に振る。

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