極上パイロットが愛妻にご所望です
「眠って。俺がいると眠れないって言うんなら帰るよ」

 立ち上がろうとした彼の手を私は慌ててギュッと引きもどす。

 自分の心をさらけ出すのは恥ずかしさもあった。寝顔も見られるのも嫌だけど、帰られるのも嫌。桜宮さんが一緒なのに寝たくないのが正直な気持ち。けれど眠いことがバレているから、彼は頑として眠るように言って譲らない。

「……いてほしい……です」

「OK」

 笑顔を向けた桜宮さんは腰を落ち着けた。

「なにか話をしてください。そうしたら眠れそう」

 素直になろう。

 そう思って、ねだってわざとらしく上目遣いになる私に桜宮さんはクスッと笑い、頭を撫でられる。

「なにを話そうか。そうだな。砂羽の行ってみたい国は?」

「う……ん。オーロラの見える……国」

 彼の静かな声が心地よくて、答えながら睡魔に襲われてくる。

「オーロラか。いろいろな国で見られるが、アラスカかフィンランドがいい。カナダのイエローナイフも見られる」

「イエロー……ナイ……フ……いつか……見たい……」

 身体を横たえ目を閉じると途端に眠気に堪えられなくなり、私の記憶はそこまでだった。

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