極上パイロットが愛妻にご所望です
「……このブロンドのきれいな人、知ってる?」

 久美にスマホを戻しながら、尋ねる声は若干震えている気がした。

「う……ん。彼女、ハンナ・シモンズといって、アメリカの航空機メーカーのCEOの孫なの」

 反応をしたのは友莉子だ。

「ええっ? それってめちゃくちゃ大金持ちじゃないの? そんな人がCAに?」

 私と言えば、ハンナさんの立場から見て、朝陽となにか関係があるのではないかと瞬時に考えを巡らせてしまって、声も出せなかった。

「ええ。聞くところによると、彼女のおじいさまは目に入れても痛くないほど可愛がっているらしいんだけど、働くことも大事だと考えて、自社ではなくAANに入社させたの。もともとハンナは大学で日本語を勉強していたから普通に話せるし、他にも何ヵ国語も話せると聞いているわ」

 私はハンナのおじいさまがただ単にAANへ入社させたのではない気がした。

「アメリカの大学卒業前にOJTをみっちり特訓し、こちらへ来たばかりよ。今のところ……」

 久美は途中で切り、茫然としている私へ視線をやりため息を漏らす。

「今のところ?」

 友莉子が身を乗り出し、先を急かす。

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