極上パイロットが愛妻にご所望です
 帰宅してベッドにポスンと腰を下ろす。

 久美と友莉子には強がってあんなことを言ったけれど、本当はこのまま朝陽がずっと好きでいてくれる自信なんてない。

 彼の周りには容姿端麗、才色兼備な美女が選り取り見取り。

 私はその中の一番下にも引っかからない。

 今までは私を選んでくれたのだと、一心に朝陽を信頼していたけれど、なぜかあのブロンドの女性、ハンナさんを見てから、胸がざわめいている。

「気のせいだと思いたいけど……朝陽、今すぐ会いたいよ」

 ベッドに横になり、ギュッと目を閉じる。

「あー。ワイン一杯しか飲んでいないのに、酔っちゃったみたい……」

 メイクを落とさなければ、そう思っても身体を起こす気になれなかった。


***

 翌日、遅番の私はいつものようにチェックインカウンターで旅行に希望を膨らませている搭乗客の手続きをしていた。

 隣には比呂がいて、ふたりの息の合った作業でサクサク処理していく。

「昨日は忙しかったでしょう?」

 比呂は休日だった。

「目が回るくらいにね。間際になっても来なかった団体がいて、探し回っちゃった。今日はマシね」
「それが一番労力を使うわ」

 比呂は気の毒というようにコクコク頷く。

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