極上パイロットが愛妻にご所望です
「さてと、休憩だわ。行きましょう」

 チェックインに並ぶお客さまも途切れて、次に受け持つグランドスタッフふたりと後退する。

 私たちは食堂へ赴き、それぞれ食べたいメニューを選び、トレイを持って席に着く。

 ボロネーゼのパスタとセットのサラダを口にして、ふと朝陽が気になった。

 彼は夕刻、上海から戻ってきている。

 もしかしたら、まだ事務所にいる……?

 食堂に来ているのではないかと、何気なく見回してみるけど姿はない。

 いたらすぐにわかるよね。朝陽は目立つから。

「砂羽、キョロキョロしてどうしたの?」

「えっ? キョロキョロなんてしてないわ」

「ううん。してた、してた」

 比呂はニコッと笑って否定してから、オムライスをスプーンに取って、パクッと食べる。

「そんなことないよ」

 もう一度弱々しく否定し、話を逸らすようにボロネーゼをフォークに巻いて口の中へ入れて咀嚼する。

「変な砂羽」

 比呂は苦笑いを浮かべながら肩をすくめる。

 朝陽とのことを彼女に話せていないから、後ろめたさを感じながらも、ホッと胸を撫で下ろす。

 食事が終わって、コーヒーを飲んでいると休憩時間が残り十五分になった。

「さてと、行こうか」

 歯磨きをして、身だしなみをチェックして再びチェックインカウンターへ向かわなければない。

< 143 / 276 >

この作品をシェア

pagetop