極上パイロットが愛妻にご所望です
 フロントガラスから眺める朝陽は素敵で、突っ立って惚けてしまいそうになる。

「砂羽? どうした?」

 窓を開けて、朝陽が不思議そうに尋ね、ハッと我に返る。

「あ、ううん。お疲れさま」

 運転席から身体を乗り出し、朝陽は助手席のドアを開けてくれる。車の外に彼が出ないのは、会社の人に見られないように用心をしてもらっているから。

 助手席に座ると、朝陽は私の後頭部へ手を回してキスを落とす。

 一昨日会ったばかりだけど、昨日も悶々としていたせいで、彼に会うのが待ち遠しかった。

「疲れているように見えるけど? 体調が悪い?」

「そうかな?」

「ああ。ちゃんと顔を見せて」

 朝陽は室内灯を点灯させて、私の両頬を大きな手で囲むようにしてジッと注視する。彼の瞳を見ているうちに、もっとキスをしてほしくなってくる。

「目の下にくまがある」

 親指の腹で目の下をそっと撫でられる。

 くまが見えちゃうなんて、メイクが落ちていたのね。恥ずかしい……。

 朝陽の目を見ていられなくなってそっと逸らすと、彼は身を私のほうに寄せ、シートベルトを装着してくれた。


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