極上パイロットが愛妻にご所望です
「まっすぐ俺のところでいい?」

「あ……今日はあの日で……」

 朝陽は明日オフ。出勤までただそばにいるだけでいいと期待を込めて口にした。

「ああ……そっか」

 そこへスマホの着信音が聞こえる。朝陽はポケットから出して、相手を確認してから出る。

「もしもし?」

 電話から、私の耳に女性の声が聞こえてきた。その瞬間、誰なのだろうと、聞き耳を立ててしまう自分がいて、すぐに嫌気がさし、聞こえないようにバッグの中を探ってスマホを出す。

 朝陽は短い返事の後、電話を切った。そして、私のほうを向く。

「やっぱり家に送る。明日も仕事だろう? 早く休んだほうがいい」

 心配して言ってくれているの……? それとも、今の女の人とこれから……?

「う……ん。ありがとう」

 私は考えたことを口にできなくて小さく頷いた。
 
***

 朝陽が家に送ってくれた日から二週間が経っていた。あれからお互いの休みが合わず、メッセージのやり取りと、ときどき電話で話すくらいしかできず、空港で見かけることはあっても、ちゃんと会えていなかった。
 
 そして、いつもあのハンナさんがいる。
 
 そんなとき、久美から連絡があり空港のカフェでお茶をしていると、驚くことを聞かされた。ハンナ・シモンズは朝陽のお嫁さん候補なのだと。

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