極上パイロットが愛妻にご所望です
「少し寝た。思ったより腹が減っていたみたいで起きたんだ」

 アイランドキッチンの向こう側にいる朝陽の顔は、先ほどよりもスッキリした感じでよくなっている気がする。

「今用意するから座っててね」

 朝陽は素直にテーブルのほうの椅子に腰かける。

 私はウォーターサーバーからコップふたつに冷水を注ぎ、味噌煮込みうどんを深めの白い皿によそった。男性のひとり暮らしだから、丼というものがなくてそれを代用することにした。

 レンゲもないから、カレー用のスプーンとお箸を選んだ。

 朝陽の前に味噌煮込みうどんを置くと、彼は「うまそう。いただきます」と言って食べ始める。

 私も対面に座って、朝陽が口へ運ぶのを、眉を下げて見つめる。彼に料理を作るのは初めてで、口に合うかわからず心配だった。

 熱々のおうどんを咀嚼した後、「うまいよ。こんなときに食べる味噌煮込みうどん、身体に染み渡る」と言ってくれた。

 どんどん食べ進めていく朝陽に、私は愁眉を開き、「いただきます」と両手を合わせてからうどんをすすった。

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