極上パイロットが愛妻にご所望です
 薬を飲んで汗をかいたおかげで、食事が終わってから熱を測ってみると、三十七度だった。朝から熱っぽかったが、本社へ出社後体調が悪くなり会議が終わって、病院で測ったときは三十八度だったらしい。

「風邪がうつったかもしれない。砂羽が心配だよ」

 キスしたことを怒っている様子。

「平気よ。風邪くらいたいしたことないわ。朝陽は明後日からフライトなんだからそれまでに万全にしないと」

「明後日は無理だろうな。治さなければスタンバイに頼まざるを得ないんだ。CAも同じことだ。航空性中耳炎にもなり得るから。そうなると長引く。俺としたことがうかつだったよ」

 スタンバイとは、常に不測の事態に備えて待機している代替要員のことだ。

 聞けばここ十年間はこれほどの風邪をひいたことがないそうで、そう話す朝陽は少しへこんでいるみたい。

「明日の朝、ご飯を食べられるようにセットしておくね。しっかり食べて治さないと」

「ああ。砂羽特製のうどんでだいぶ復活したから、そう休まないで済みそうだ」

「うん。お鍋にまだ残っているから、夜お腹が空いたら温めて食べてね。あ、でも心配。泊まっていい……?」

 朝陽の考えはわかっているから、上目遣いで可愛く聞いてみる。



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