極上パイロットが愛妻にご所望です
「ダメだ。ひとりでできるから。帰るんだ」

「朝陽っ」

 懇願する私に、彼は厳しい目で頭を横に振った。

「お前がここにいたら余計に心配で治るものも治らなくなる。だから帰って。送れなくて申し訳ないが」

「……わかったわ。連絡してね」

「もちろん。すでに風邪をうつしてしまっているかもしれない。俺もできることをするから、いつでも連絡をしてほしい」

 お互いを気遣っていることがおかしくなって、フッと笑みを漏らした私たちだった。
 


 朝陽は一日だけスタンバイに頼り、次の日から台湾へ飛んだ。台湾は往復でその日に帰国する。

 私はといえば、朝陽は風邪をうつしたのではないかと心配していたけれど、のどの痛みもまったくなくて、元気だった。

 キスしたのにうつらないなんてね。どれだけ健康なのかしらと、自分を笑った。

 そして数日が経ち、朝陽はロンドンに飛んでいた。帰国は明後日の月曜日。

 土曜日の今日、私のシフトは休日で、秋冬物の洋服を探しに、ちょうど休みが合った久美と一緒に買い物へ出かけている。

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