極上パイロットが愛妻にご所望です
 抱きつく私を朝陽は力強い腕で抱きとめた。

「よかった……心配したんだから……信じていたけど、生きた心地がしなくて……」

 朝陽の元気な姿に安堵し、気づけば涙が頬を濡らしていた。

「砂羽、心配してくれたんだ?」

 当たり前のことなのに、尋ねる朝陽に私はぶるりと身体を震わせ顔を上げる。

「もちろんよ」

「砂羽、愛している。「死」という万が一を頭によぎったとき、砂羽の顔しか思い浮かばなかった」

 朝陽は頬に伝わる涙を親指の腹で拭い、唇を重ねた。

「塩辛い」

「も、もうっ。泣かせているのは朝陽なのっ」

 そのとき、「きゃーっ!」という声や、拍手が聞こえてきてハッとなる。

 朝陽に会えた嬉しさで、周りのことは気にする余裕がなかった。

 羞恥心で、かあーっと顔が熱くなり、顔を上げることができない。そんな私を朝陽は笑う。

「こっちへ来て」

 朝陽は展望デッキの隅の人がいないベンチへ私を誘導する。

「座って」

 私を腰かけさせてから、彼も隣に座り身体はこちらへ向ける。朝陽の筋張った大きな手に、私の手は握られたままだ。

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