極上パイロットが愛妻にご所望です
 ひとつひとつ個室になっているファーストクラスの真ん中の二席に案内される。間の仕切りを外せばカップル席のように、相手の姿が見える。

 私はファーストクラスの豪華さに目を丸くし、開いた口が塞がらない。

 コンパクトな造りで、なにもかもが痒(かゆ)いところに手が届くというのだろうか。コートをかけるスペースや、手荷物をしまう場所もある。

 リラックス着やハイブランドのポーチに入ったアメニティに、音が素晴らしいと有名なヘッドホン、フリーWi‐Fiまで使える。

 食事後はCAがベッドメイキングしてくれるというのだ。

 これがファーストクラス……これならば疲れることなく現地へ行けるだろう。

 エコノミーの座ったまま眠る体制しか知らない私はため息を漏らしそうになった。

 表情がころころ変わる私を、席に座った朝陽は楽しそうに眺めている。

「すごいね。朝陽、ありがとう」

「砂羽が喜んでくれるのが、俺にとって一番嬉しい。君の気が楽になるなら言っておくが、社員割りシステムがあるし、多忙で金を使う時間もない。通帳の残高は増えていく一方だから」

 おどけるような彼だ。

 社員割りシステムがあったとしても、ファーストクラスは桁が違うし……。

 でも……私が喜ぶのが一番なんだよね?

 私は最高の笑顔になるように口角を上げた。



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