極上パイロットが愛妻にご所望です
 すべてがあっという間に過ぎていく時間。きっと、ほんのわずかのうちに、この旅行は終わってしまうだろうな。

 ひとつひとつを心に刻んで大切に過ごそうと、温かな朝陽の手を握りながら眠りに就いた。

 
 バンクーバー国際空港に着いたのは十時ちょうど。定刻の十分前の到着だった。

 ファーストクラスの乗客は一番に機内を出られ、朝陽は私の手を握りサクサク進んでいく。

 いつもの私ならば機内から入国手続きの場所までキョロキョロ、案内を確認しながらでないと進めないが、朝陽はなにも見ずに歩いている。

 何度か友莉子と海外旅行はしており、いつもドタバタで珍道中になっていた。朝陽に任せてばかりだけど、用意周到だし、外国に慣れている彼だから安心だ。

 入国審査などすべてが終わり、キャリーケース三つをカートに乗せて外へ出る。そこに迎えの車が待っていた。

 ガラスのドアから外へ出た途端、ブルッと寒気がきて、ダウンコートのジッパーを首元まで上げる。

 体感は東京より寒くて、バンクーバーの空はどんよりと雲が厚かった。

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