極上パイロットが愛妻にご所望です
「……ん。ありがとう。朝陽」

 私は頬から外された彼の手の甲に手を置く。バンクーバーの寒さにも負けず、朝陽の手は温かい。

「砂羽の手、冷たいな」

「冬はいつもなの」

 冷え性なのが悩みの種。

「俺がそばにいられるときは温めてあげるからな」

 朝陽は私の手を温めるように指を絡ませて握ってくれた。
 

 市内にあるAAN系列のラグジュアリークラスのホテルは、この街に融合するような落ち着いた石造りの外観で、中はシックな雰囲気の落ち着けるインテリアだ。

 ロビーでは日本人の宿泊客が目につく。

 たくさんの日本人のスタッフが駐在しているので、英語が苦手な観光客には人気があるようだ。

 私もホテルの名前だけは知っていた。

 ここに泊まるのは今日だけ。残り三日間はイエローナイフ。そして翌日の早朝に出発してバンクーバー乗り継ぎで帰国になる。

 ベルボーイに案内された部屋は、ペントハウスで広々としたスイートルームだった。

 先に入室した私は、あまりの広さと豪華さに振り返って朝陽へ視線を向ける。彼はベルボーイにチップを渡し終えたところで、こっちへ向き直った瞬間――。

「なにも言うなよ」

 ぶっきらぼうに言葉にした朝陽はつかつか近づいてきて、まるで私が宝物のように抱きしめる。

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