極上パイロットが愛妻にご所望です
 頭はニット帽をかぶり、温かい防寒着のフードを重ねている。

 露出した顔は刺すような冷気で若干痛く、吐く息は真っ白だ。でも、大自然の中にいるだけで、清々しい気持ちになっている。

 朝陽は空を見上げている。私も少しでもオーロラが出現していないか、空をくまなく見てみるが、東京では見られない無数の星がキラキラ瞬いているだけ。

「お天気はよくなったけど、どうなんだろう……」

「少しでも見えてほしいよな」

 寒さと防寒具のフードがあるから、声がくぐもって聞こえる。

「朝陽は見たことがあるんでしょう?」

「ああ。オーロラだけがすごいんじゃない。コックピットからはいつも素晴らしい景色が広がっているよ」

 砂漠の景色や、いろいろな姿を見せる印象的な雲の形。月の美しさなどを話してくれるのを、想像しながら私は聞いている。

 オーロラは朝陽にとって、珍しいものでもないのかもしれない。

「砂羽と出会ってからは、美しい景色を目にするたびに、『見せてやりたい。この感動を分かち合いたい』と思うようになった」

「朝陽……」

 彼の気持ちを知って、凍えるほど寒いのに、心の中は暖かくてずっとここにいられそうなくらいだ。

 その日、結局オーロラが出現することはなく、深夜を回り、がっかりしてホテルに戻った私たちだった。

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