極上パイロットが愛妻にご所望です
 仕事上がり、朝陽が連れてきてくれたのは、川崎の工場地帯が見える埠頭。工場地帯には明かりが煌々としていて、見る者の目を奪う。
 
 夜の工場地帯を観に来るツアーがあると聞いていたが、なるほどなと思うほどきれいだった。
 
 途中で買ったコーヒーとサンドイッチを出していると、車内搭載のテレビでは芸人たちの新年のカウントが始まった。
 
 そして新年おめでとうの声。

「砂羽、Happy New Year」

「明けましておめでとうございます」

 ドリンクホルダーにカップを置いたところで、朝陽に後頭部を引き寄せられ、唇が重なる。
 外から誰かに見られるかもしれない車内なのに、貪欲に唇を求められ、夢中で応える私だ。

「砂羽を愛したくてたまらないけど、お腹も満たさないとな」

 最後に甘く唇を食んだ朝陽は、渋々私から離れてコーヒーのカップを渡してくれる。

「今日はゆっくりできた?」

「ずっと寝てたよ。砂羽の方は忙しかっただろう?」

「それはもう。足が痛かったから、迎えに来てくれて嬉しかった」

 コーヒーを口にしていた朝陽は聞き捨てならないと、ずいと私に顔を近づける。

「それは帰りが楽だから?」

「あ、違うわ! 会いたかったんだから。一日一日、会えない日数を数えていたのよ?」

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