雨のリフレイン
「大丈夫か?」


三浦から離れて、水上はボソリと柊子に問いかけた。


「怖かったですよ!
先生、すごい人にロックオンされたんですねーホントにモテますね!
私のことなら、心配しないで下さい。
私なら、大丈夫ですから」



人で溢れた廊下で、水上の後ろからついていきながら、柊子はため息交じりで答えた。


「…君にまで迷惑かけてすまない」


ーーまた、いつもの『君』に戻っちゃった。


さっき、『柊子』と声をかけられた。
三浦との会話の中でも、『柊子』と名前が出てきた。
水上は、いつも柊子を『君』と呼ぶ。それは柊子の名前を知らないのかと思うほど。
だから、彼の口から柊子の名前が発せられたことは、三浦からの嫌がらせなんて、忘れてしまいそうなほどの衝撃だった。
すごくビックリして、でも、すごく嬉しかったのに。





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