雨のリフレイン
母の検査結果は、問題なし。良くもならないが、悪くもなっていない。ホッと一安心だ。

「このまま、薬を続けましょう。
それと、水上先生からこれを預かってます。
八坂さん、手首、痛いのかな?」


担当医が差し出したのは手首用のサポーターだった。
柊子は、パッと自分の手首を抑えて跡を隠す。

「あー、勉強しすぎ、かな?アハハ…」
「今年、卒業でしたね。頑張って下さい」

顔なじみの医師はそう言ってサポーターを渡してくれた。
それを受け取ってから診察室を出た。



「うふふ、さすがは洸平君。小さな気遣いが出来るわね」

母が柊子の手首にサポーターを着けてくれる。
サイズはピッタリだ。


水上の小さな優しさ。
それが、自分に向けられたものだということが、とてつもなくうれしい。
これだけで、頑張れそうだ。


「だから、好き。水上先生」
「…負けるな、柊子」

母が力強く応援してくれる。

「戦う気もないよ。先生の気持ちが大事。
先生が三浦先生を選ぶなら、諦めるよ。
それに、今は何より勉強を頑張らないとね。
さ、お母さん、帰ろう」

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