雨のリフレイン
「もう、柊子。洸平君は、アンタを誘いたかったのよ?せっかくの機会なのに」

水上の姿が見えなくなると、母の小言が始まった。だが、柊子は、それを上手く聞き流す。


ーーあれは、たまたまだったのかなぁ。


『柊子』


彼の唇から、彼の声で自分の名前が発せられた。
それだけで、胸が震えるほど熱くなった。
それまでの三浦からの理不尽な責めなど、一瞬で忘れてしまったほど。


「ちょっと、柊子?これ、どうしたの?」


柊子の手首には、三浦に掴まれた跡が赤く残っていた。爪も食い込んだのだろう、細いカーブを描いた跡は、わずかに皮ふが裂けている。
半袖を着ていたから、隠しようが無く、母に見つかった。


「水上先生の熱狂的ファンに。目障りだって。
目障りって言われるほど、距離は近くないと思うんだけどね」
「三浦…先生?
ずいぶんなことするのね」

さすがは母。ズバリ相手を言い当てた。

「午後から学校でしょ?アンタは色白だから、目立つわ」

心配そうに、手首を見る母。

「平気よー。
お母さん、何でも心配しすぎ。私のことなら、大丈夫だから。
ほら、呼ばれたよ、行こう」

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