雨のリフレイン
翌日は、抜けるような青空だった。
朝から気温が上昇して、間違いなく暑い一日になりそうだ。


写真撮影は、ホテルストリークで行われた。


「まぁ、綺麗な花嫁さん」
衣装を着せてくれた担当者が、柊子に言ってくれた。

「ホント。
柊子、可愛いわ。
やっぱり、こっちのデザインにして、正解ね。マーメイド風デザインも良かったけど、シンプルでちょっと物足りなかったから」

多くのレンタルドレスの中から、母が選んだのは、世界的デザイナーJUNNZOのフリルとレースがふんだんに使われた、豪奢なドレスだった。
背中と胸元がいやらしくない程度に開いていて、柊子の若さで弾けるような肌が露出する。

柊子自身はこの肌が見えるデザインは嫌だった。だがレースもフリルもなく、露出も少ないデザインのドレスを選んだら、母に物足りないと言われた。

『絶対こっちよ。
せっかくの若さを活かさないとね』

同席してくれた女性言葉を使う男性スタッフも、こっちを大プッシュしていた。


ーー仕方ない。
今回は、母の為の写真撮影だ。母の意見が最優先。



鏡に映った自分。
普段メイクはほとんどしない。それが、完璧なフルメイクを施され、髪も綺麗にアップして、まるで別人のよう。

しかも、この間試着した時より、さらに露出が増えてレースも倍増している気がする。
しばらく時間が経ったから、記憶も曖昧だけれど。


ーー似合う訳がない。
ウェディングドレスというのは、幸せの象徴。
ただ身にまとっただけの私にとっては、重くて、着心地の悪い代物にすぎない。




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