雨のリフレイン
「新婦様のご準備は整いましたか?
それでは撮影室にご案内します。
新郎様はすでにお待ちですから」


担当者が柊子を呼びに来る。

重いドレスを引きずりながら柊子は案内されるまま、母と共に撮影室へ移動した。


「洸平くん、お待たせ。
うん、やっぱり洸平くんはいい男ねー。
まるで何処かの国の王子さまみたいよ!」


母は水上の姿を見つけるなり、ご機嫌で駆け寄る。
柊子は、真っ白のタキシード姿の水上に目を奪われた。
いつも白衣姿か、ポロシャツにチノパンツ姿くらいしか見ない水上が、あまりにカッコよくて、目が離せない。


「ありがとうございます、信子さん」


そう言って微笑めば、まるで少女漫画のヒーローのようなキラキラとしたオーラが見える気がした。


ーーこんな格好の先生が見れたなんて、眼福。
それだけでも、今日来た甲斐があった。


そう思いながら水上を見ていると、彼もまた、柊子を見ている。

その表情から、感情は読めない。

水上と比べると自分は、いつにない暑化粧で別人のようだし、ドレスも着せられているだけで似合っているとは思えない。
それでも、いつもと違う自分を少しでも良い、と思ってくれたら嬉しい。



「では、新婦様はこちらに。
まずはお二人のお写真を撮りましょう」


柊子はスタッフに手を引かれ、水上の隣に立つ。


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