雨のリフレイン

夫と妻の関係

「柊子ちゃんにこんな顔させやがって。
洸平、俺は怒ってるんだ。何したんだよ?」
「何って、何もしてないが?ただ、指示通りに写真を撮ってただけだ。
君…具合悪いのか?流石に暑いしな」


やっと、水上が柊子の顔を見た。

見てくれた。
それだけで、柊子の胸は苦しくなる。


柊子はそっと翔太の体を押した。
流石の翔太も、力を緩めて体を離してくれる。

「翔太先生ったら、そんなにくっついていたら写真なんて撮れないわ。
先生は友人役、なのでしょう?」


翔太は体を離しつつそれでも柊子の腕を掴んだまま、洸平に挑むような視線を送る。

「洸平。お前、俺と衣装チェンジしろよ。
お前の方が友人役になれ」
「今更何を言い出すんだ、翔太?」
「今日は、幸せな日のはずだ。
柊子ちゃんは高校生の頃からお前に一途に惚れていて、そのお前の隣でウェディングドレス着ていられるんだ。今日は久しぶりに柊子ちゃんの最高の笑顔が見られると思ってた。
だから、モデルの話も持ってきたんだ。
それがどうだ。
この世の終わりみたいな、苦しそうな笑顔でさ」
「だから、何でだ?俺は何もしていない。
徹夜で勉強していたから、疲れているのか?
こんなモデルなんてやめて、帰るか」

いつもなら柊子の心の機微に敏感な水上。だが、今日は、翔太の方が何故かズバリと突いてくる。
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