雨のリフレイン
「バカだな、そんなこと思っていたのか。
…くだらないことを」


水上のイラついた声がした。
と思った次の瞬間、ふわりと柊子の体が浮いた。

ウエストに水上の腕がある。まるで子供を高い高いしているような形で柊子の体が浮いていた。


「み、水上先生、重いから!お、下ろして!!」
「誰にもこの役は譲らないよ。
このドレス、写真だけならこのままでいいけど、本番の時はもう少し露出を控えるように。
ちょっと…ていうかだいぶ刺激的だから。
翔太みたいに横取りしたくなる奴、続出しそうだ。
まぁ、うらやましいってそこで指くわえて見てろよ」

水上はそう言って挑戦的に笑うと、柊子を自分の胸に抱き寄せ、ポカンとしている柊子にキスをした。

柊子は混乱して、されるがままだ。

どういうこと?
どういうこと?
本番って何?何のこと?
それに、キスされてる!?

優しく触れるだけの、キス。
こんな格好で、こんな優しいキスされたら、勘違いしてしまいそう。
水上先生が、私のことを…なんて、勘違いしちゃうから。

「おーおー。珍しく独占欲むき出しにして。
洸平。ごちそーさま。なんなら、今夜、スイートルームの予約取ってやろうか?」
「…それも、いいか。どうする?」
「ど、ど、どうするって…」

真っ赤になって動揺する柊子に、水上はプッと吹き出した。

「あー。もう、からかわないで下さい!一瞬、本気にしちゃったじゃないですか」
「本気で、期待した?君の気持ちは、よく知ってるよ。
俺のこと、好きなんだろ?」

からかわれてる。
わかっているけど、悔しいけれど。

柊子は、コクンとうなづくしかできない。
悔しくて、恥ずかしくてうつむいた。

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