雨のリフレイン
ウトウトと浅い眠りを打ち破ったのは、けたたましい携帯電話の呼び出し音だった。
何ごとかと飛び起きようとした柊子の肩を、大きな手が押さえる。

「はい、水上です。はい…えぇ…わかりました。
これから向かいます」

洸平は、脱ぎ捨てたスラックスのポケットから携帯を取り出して応答する。

「…柊子、すまない。病院から呼び出しだ。
こんな日くらい、朝まで一緒にいたかったけど」

柊子は、ため息をついている洸平の背中にそっと頬を寄せた。

「休む暇なくて、疲れているのに。大丈夫ですか?」
「…疲れてやしないよ。それどころか柊子をもっと抱きたいくらいさ」
「えーっ!それは、私が無理です…」

洸平は笑って、柊子の頬にキスをした。

「これからは俺、この部屋で暮らすよ。
隣は荷物置き場にでもする。
お互いに忙しいけど、なるべく一緒にいられる時間を持とう」

そう言って、洸平は素早くシャワーを浴びて、着替えを済ませる。
身支度を整えるのに、10分とかからなかった。

その間、柊子はあちこち痛む体を起こして、何とか服を着るだけで精一杯だった。



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